ゲームプランナーの回顧録3

開発初期2


○クライアントとどう付き合う?

 ディベロッパーの方向性が定まらないという事は、プロジェクトの進行は必然的にクライアント主導で進んでいた。といってもクライアントが率先的に仕切るわけでもなく、ただ単に一番声が大きい人、つまり「俺はこういう事がしたいんだ」という意見を持っていた人間がクライアントの中の一人だっただけだ。
大抵の場合、こういう人が『プロデューサー』という立場にあたる。平たく言うと一番偉い人だ。

 どんな仕事でも共通して言えることだが、クライアントというのは基本的に我侭である。お金を払っているから当然といえば当然だ。ゲーム開発におけるクライアントが言うことは大体こんなことである。


・こんなシナリオにしたい!
・こんなキャラクターを出したい!
・もっと綺麗なグラフィックがいい!
・凄い派手な演出にして!
・なんか面白いシステム考えて or こんな面白いシステム考えた


 実に素晴らしいことだ。個人的にはこういった意見が出てくるというのは良いことだと思ってる。ただ残念ながら、我々には彼らの意見をうまく調理する手段もさらりとかわす技術も持ち合わせていなかった。
 ゲームの企画立ち上げは面白いアイデア出しの機会なので、みんな自分が面白いと思っていること、好きな発言をする。ですが、そういった「面白いアイデア」だけ話し合っても開発工程を作ることは不可能なのだ。大分回りくどくなってきた。

 この三ヶ月間、私たちとクライアントが決めたことは「シナリオ」と「キャラクターデザイン」だった。あと少しだけ「ゲームシステム」。「シナリオ」と「キャラクターデザイン」は前作でもっとも揉めた部分でクライアントのこだわりが非常に強い項目だった。
社外の人間も関わる部分なので早めに取り掛かりたかったという側面もあった。確かに早めにやらなくては間に合わなかった気がするが、結局揉めに揉めて不必要に時間を使うだけだった。


今でもライターさん、デザイナーさんには足を向けて眠れない思いだ。


 私の一番の過ちは、クライアントを信じていなかったことだ。前作の痛い思いが強く「面倒なクライアント」という意識を強く持ちすぎてしまったのだ。結果、彼らを刺激せずに丸めこうとするばかりだった。それも立ち行かなくなるのだが…・・・。