ゲームプランナーの回顧録7

○上司倒れる

 チームが暗中模索の中彷徨っていたある日、上司が体調不良で休む日があった。当初は一時的な体調不良と思っていたが、徐々に休みの日数が増えていき、ついには会社に来れなくなってしまった。会社に来た時に状況を聞くと、頭痛や吐き気がする(というか何も出なくても吐いてしまう)といった症状が続いているようだった。平たく言うと「うつ」にかかってしまったのだ。

 当然だがこの状況はチームのメンバーや上層部にかなり不安を招く事態となった。そもそも今まで多業務をこなしてきた人が倒れてしまう事態はかなり異常な状態だった。対策として、あらたなディレクターを投入しチームを立て直す事となった。新しいディレクターが来るまで3週間頑張ってくれとの達しが出た。

 この時私も上司と同じような状況であった。しかし先に上司が倒れたことによって、逆に倒れられないと思えたし、何より上司の分も仕事をしなくてはならなかった。この頃の精神状態はかなり極まっていた。毎日通勤するたびに車に轢かれないか(死なない程度に)と考えながら歩いていた。

 人ってほんの些細なきっかけで壊れてしまうのだと思った。上司はもともと倒れるようなタイプでは無いと思っていたし、本人もそう言っていたと思う。今までそれくらいの修羅場を潜ってきた人だからだ。でも倒れてしまった。「うつ」は誰でもなる可能性があるというのを本当に実感にしたのはこの時が初めてだ。

 初めはただの風邪だったのかもしれない。ただそれから立ち直るほどの精神力はもう無かったのだろう。そうなってしまったら終わり。病気まで一直線だ。どうして気づいてあげられなかったのだろう。人が簡単に倒れてしまう事を改めて知る事となった。そして人を良く観察しなければならない事を学んだ。